カン、カン、カン。カン、カン、カン。
 かたい木板をたたく音が、王宮のほうからあわただしくなりひびいてきた。
 たちまち王宮をかこむ村々から、ざわめきがおこった。
 男たちのどなる声に、女たちのさけび声がまじり、犬がうるさくほえたてた。
 木板の音は卑弥呼の住む巫女(みこ)の森にもきこえてきた。木板のたたきかたには、いろいろなきまりがある。
 「敵がせめてきた。男たちよ、あつまれ」と、その音は告げていた。
 「また、いくさがはじまる……」 卑弥呼 (ひみこ)は美しいまゆをひそめてつぶやいた。