そしたら、その人が急にこっちを向いてなにかぶつぶつ言いながら歩き出した。俺は怖くなって振り返って走り出した。

最初の時点で、そいつと俺の距離は結構離れていたから走れば振り切れると思ってた。
でも、ぶつぶつ言う声が離れていくどころか少しずつ大きくなってくる。
走りながら何度か後ろを振り向いたけど、そいつの姿は見えない。でも、声は聞こえる。
俺は訳がわからなくなり、声を聞かないように自分で「あー」とか「わー」とか言いながら、とりあえず家まで全力で走って逃げた。

家の玄関を開ける頃には声は聞こえなくなっていた。
急いで鍵をかけてほっと一息つく。
しばらくその場であれは何だったのか考えたけど、答えは出ない。
人なのか、霊なのか。
まぁいいやと思いリビングの扉を開けると

そいつが壁の方を向いて立っていた。

リビングの壁におでこを付けるような格好で。何かぶつぶつ言っている。

俺は急いで玄関まで行き、鍵を開け、走り出した。
そして、そのままコンビニまで行き、友人に電話をして迎えに来てもらった。

俺は友人に「幽霊か人間かわからない変な奴に追いかけられて死にそうになった」みたいな感じの説明を震えながら話した。俺の話を半信半疑で聞いていたけど、俺の怯える様子を見て信じてくれたみたいだった。