俺たちは山道をさらに登り、しばらく進むと、掠れた字でそばと書かれた看板と一軒の古民家が前方に見え始めた。
「あそこ、そば屋なんかな」
俺は看板を指さしながら言った。
「そばは腹に溜まるから、ちょうどいいんちゃう?」
Bがそう返す。俺は車を運転するAに「ここ寄ってく?」と尋ねた。Aは頷き、車を停車して俺達はそば屋に入った。店内は和風な内装で薄暗く、入口近くにはテーブル席が、左側には厨房室、右奥には畳が敷かれた2つの個室があった。店員は見たところ1人しかおらず、その男性店員に個室に案内され、俺達は席に座った。Bがメニュー表を開き「何にする?」と尋ねるので俺は天ざるそばを注文し、Aは山菜そば、Bは天丼を頼んだ。