忠臣蔵関連の諸作品は、
どの作品が史実に近いかという謎解き風に批評するのも一つの忠臣蔵の楽しみかた。
どういう描きかたがされた作品がうけたか、その作品のうけた時代の価値観の変遷を比べてみるのも一興。
赤穂方が善玉で吉良方が悪玉とする勧善懲悪な作品が主流の時代が長かった。
そんな主流で卑怯者のような描かれかたが多かった大野九郎兵衛を、実は赤穂浪士に積極的に協力した人物と描く作品群が現われる。
優れた官僚であった九郎兵衛が討ち入りまでの赤穂浪士を経済的に支えた有能な協力者と描いたり、
赤穂浪士が本所松坂町で吉良を討ち逃がした場合に、上杉領へ逃亡する途上で打ち取る部隊の指導者だったとする説。
そして、勧善懲悪を越えて、双方が時代に翻弄された登場人物のすべてが悲運だったとする作品。そのタイプが今日の一般人には受け入れられやすい。