こうして、時代は逆戻りし、海外旅行は日本人にとってふたたび“高嶺の花”となった。

思えば海外旅行が大ブームになったのは1980年代だった。成田空港の開港やプラザ合意後の円高、そしてバブル景気がブームを加速させ、日本人の出国者数は1980年の390万人から1990年には1000万人を超えた。以後も年々、増え続け、コロナ禍前の2019年にはついに2000万人に達した[図表1]。

しかし、もう2度と2000万人を超えることはないだろう。



今の日本経済は1980年代の半分の実力

海外旅行が“高嶺の花”になってしまったのも、海外での日本の存在感が薄れているのも、日本経済が衰退を続けているからだ。いまの日本経済を見ていると、海外旅行が大ブームになった1980年代の半分の実力しかない。

ところが、日本政府にはその実感がない。岸田文雄首相は、相変わらず、無用な外交を続け、日本がいまも「大国」であるかのように振舞っている。しかし、どう見ても日本は「先進転落国」であり、他国を援助する余裕などない。

2023年2月、日本政府は来日するフィリピンのマルコス大統領との会談で、年間2000億円を超える支援を表明したが、これに対してSNSでは怒りの声が巻き起こった。

《年間2000億円超支援表明? 防衛費の一部1兆円を増税しようとしてもめているのに》

《岸田の海外バラマキ合計18兆円超えたぞ自公支持者と無投票層のせいで日本の貧困が加速して海外が益々潤ってる》

《オレたち、外国を豊かにするために働いてるんじゃねえんだよ》

2024年2月に東京で開かれたウクライナ復興会議でも、SNSには怒りの声が溢れた。