「あっちを収めればこっちの障りが出てくる、
 考えなきゃいけないことが十も二十もある。こらたまらんな。」
親父はノイローゼのようになっていました。
そして今にして思えば骨董蒐集の最後になったのが、
江戸時代の幽霊画でした。これはずいぶん高価なものだったはずです。
白装束の足のない女の幽霊が柳の木の下に浮かんでいる絵柄で、
高名な画家の弟子が描いたものだろうということでした。親父は、
「この絵はお前たちは不気味に思うかもしれんが、実に力を持った絵だよ。
この家の運気を高めてくれる」と言っていました。