シロの舌の一部だと思いました。あ然としながら石のほうを見ますと、白い中に赤い、
血の色の筋が2ヶ所入ったようになり、それは内部にあるもののようで、
いくらこすってもとれなかったんです。いいえ、すぐ前まではありませんでした。
でね、その筋が入ったのが、石の中にある女の顔の口唇の部分です。ちょうど
紅をさしたようで、女の表情が妖艶とも酷薄とも見えるように変わったんです。

ぞくぞくっとしました。それで夢中になっていたのが一気に冷めてしまって、
同時にね、あの老人が言っていた「手に負えなくなったら連絡して」
という言葉を思い出したんです。名刺はとってありましたし、
電話したらすぐに老人が出ましたので、事情を話しますと、
「ははあ、やはりそういうものでしたか。今から引取りに伺いましょう」でね、
夕方になって、老人はひじょうに古いキャデラックを自分で運転してやってきました。