でもね、その頃には売るという考えはすっかりなくなっていたんです・・・
ある日です。縁側でそのときも石を磨いてたんですが、陽気がいいので
少し手をとめて うとうとしていました。そしたら外にシロがきまして。

ええ、このシロというのは猫です。家で飼ってるわけではなく野良なんですが、
人に慣れてまして、ときおり姿を現したときに餌をやったりしてたんです。
縁側にひょいと跳び上がり、わたしの手の中にある石に近づいて、
顔の出ている部分をぺろりと舐めたんです。
その途端、「ヒンギャー」という声を上げて垂直にジャンプし、
下に転げ落ちて一目散に逃げていったんです。わたしはそれで一瞬でうたた寝
から覚めまして、見ると床板が血だらけになっていたんです。
シロの血ですよ。その中にまだピクピクと動く肉塊・・・