うちの座敷の床の間に飾ってあった石の話なんです。今はもうないんですけどね。
そうですね、大きさは横40cm、縦が30cmくらいでした。
やや横長の、山のような形をした自然石です。
かなり古色のついた木製の台座の上にのってました。こういうの、
水石っていうみたいですね。中国の宋の時代に始まった趣味が、
日本に伝わってきたって話です。後醍醐天皇が愛蔵していた石が、
今も美術館に遺されてるそうですね。その石、色はやや紫がかった青で、
表面がつるっとしてたんです。おそらく川の中にあって、
水流で磨かれたんだろうと思います。それで、ちょうど真ん中へんに、
そうですね、幼児の拳が入るくらいのぼこっとした穴があって、
離れたところから見ると、全体が目に見えなくもないっていう。