死ぬほど怖くもないが
 もう20年くらい前に友人から聞いたK県某市での話になる
 友人は会社を退職するにあたり、社内の部署に挨拶周りを済ませ
 最後に子会社へ出向している知り合いに挨拶をする為に子会社の事務所へ
 立ち寄った。その事務所は親会社と同じ敷地内にある古い建物の2階の一室で
 いつからか物置として使われていたものを最近事務所にしたものである。
 扉を開け室内に入ると友人の知り合いは正面窓際の机で入り口に向かって
 座っていたので扉付近に立ったまま友人が退社の挨拶をすると、その知り合い
 は今後の転職先も気にしてくれていたが、友人にはその時からその知り合いの
 向かって左側に白装束を来た全身が白い女の人が見えていたという。霊感も
 無い「見えない人」という自覚がある友人にとっては初めてだったらしい。
 そんな者が見えているから友人は顔は知り合いの方を向けているが目はその
 左側の女の方をずっと凝視したままである。友人は女の顔を何度もじっくり
 見るものの、顔はまるでピントが合わない画像の様にぼんやりとして人相は
 わからない。ただ友人から見て右側のおでこにたこ焼き大の瘤(こぶ)があり、
 その瘤の先の部分が赤く充血していたのははっきりと確認できたという。