俺が以前引っ越した時の話。

新しい引っ越し先は東京より埼玉方面の1LDKのアパート。
友人が引っ越しの手伝いをしてくれて、新居に荷物も運び終わって、感謝として寿司を注文して2人で食べてたんだ。
いい部屋だなーとか、たまには遊びにくるよーとか、そういう何気ない話をしてたら友達が何か1点を見つめたまま固まってるんだよ。
俺が『どうした?』って言って友人の視線を追って見たんだけどそこには本棚があって、本がきれいに収納されてるだけ。

何か恥ずかしい本とかあったかな?

って思って並んでる本に目を向けても、友人には多分興味が無い小説とかそういうのが並んでるだけ。

俺『あれ?お前小説に興味持ち始めてんの?貸そうか?』

って声をかけてみたんだけど友人は

『ちがう、そういうのじゃない』と。

でもそいつはずっと本棚を見てるわけ。
何か気になる本があるのかとか、どうしたんだ?とか聞いてみても、そいつはじっと本棚を見つめたまま

『うそだろ、そんな訳無い』ってブツブツ言ってるんだよ、俺もしつこいなと思ってたら、その友人がゆっくりと本棚を指差しはじめた。

『お前、あれは見えるか…あの本と、あの本の間』

って指差し始めた。
(つづく)