ルナとカナという名前の双子は虐待環境の中生まれ育ってきた。まともに言葉を教わらず知能も未発達なまま、彼女たちにできることは親に自分の名前を喋ることと「はい」の返事のみであった。

ある日双子の存在を知る男が、幼い二つ子で売りつけるために二人を誘拐した。
トラックの荷台に双子を乗せて山道を走る、が、道中フロントガラスの目の前に何かがよぎり、驚いた拍子に雨でスリップし、トラックが転倒。男が運転席から脱出し荷台を確認しに行くと、双子のうち片方は頭が割れ、息絶えていた。生き残った方は目を開き、ただ宙を見つめていた。
男は仕方がなく死んだ方を土の中に埋めると共に、ふと死んだのがどちらの方か気になったので、土で覆い隠し死体の遺棄を終えたタイミングで生きてる方に尋ねた。


「おい片割れ。今埋めた方の名前はルナか?カナか?」

雨がざあざあと降っている。

「ええ?どうなんだ。死んでる方の”名前”は。」

「カナ」

彼女は従順に答える。

「じゃあお前はルナの方か。よく聞け、今から素直に俺の指示に従っていれば解放してやる。だから黙って大人しく言う通りにしろ。(んなわけねーだろ。お前だけでも何とか高く売りつけてやるよガキ。)いいな、ルナちゃんよ?」

「はい」

返事がルナから返ってきた