まず全身濡れてて椅子の下のタイルカーペットの色が変わってる。
髪は真っ黒で座ってる椅子の座面に届いてる。背中も顔の横も長い髪が垂れてる。
服は腕の部分が見えたけど、漫画にありそうなハッキリしたつぎはぎのある普段着用の着物?みたいなの。

きれいな建物の中でそこだけ明らかに異常だったんだけど、その時は「無料なので変な人も多い」って差別的な思い込みから「随分と濃いのがいるな」としか思わなかった。
ただ、どいてもらってもそこに座んの嫌だし、すぐ近くの予約不要席の空きを確認するかとか思ったところで
その人?がいきなり「ゥ゙ゥ゙ヴお゙お゙!゙!゙」みたいな大声あげて全身揺すり始めた。
自分は突然のことに硬直して、固まったまま立ちすくんでた。

固まったまま動けずにいたら、最初は大げさな貧乏ゆすりみたいな動きだったのが、髪の毛バッサバッサさせながら全身捻り始めた。
表現できないような声も上げ続けてる
自分はというとずっと固まってた。時間間隔なかったけど、数分はそのままだったと思う。
固まってるうちに今度は隣の席の人をアクリル板に額と手をべったりくっつけて覗き始めた。
しばらくして隣の人が反応しないから飽きたのか、今度は逆隣り(自分が立ってた方)を同じように覗き始めた。
顔も髪で覆われてて視線とか表情は見えなかった。
「ゥ゙ヴ」みたいな声はずっと発してた。

ソレが自分の方向を向いた恐怖からか頭が動くようになって「視線合わせたらまずい」って逃げようとした。
こんなときに変に冷静で「急いで回れ右したら目立つかも」と思って、一度ソレの真後ろを通り過ぎて次の通路で曲がって、壁1枚隔てた別の閲覧席がある通路に移動した。
まだ声は聞こえるけどとりあえず大丈夫だろうという気持ちになって、「席はキャンセルして別の階の閲覧席行くか(あれが自分だと思われて記録に残っても嫌だし)」とか考えてた。
でもそこで初めて気づいたんだけど、あれだけ大声出して動いてて、今も声聞こえるのにどっちの閲覧席の人も誰も何の反応もしてない。
覗きこまれてた人も無視してるとかじゃなくて何事もないみたいだった。