オフィスの窓から走ってきた方を恐る恐る見ると、このビルに向かう道沿いの少し離れた位置にそいつはいた。

さっきいた場所から少し移動したことになる。

追ってきたのかと思うと本当に恐ろしかったが、そこからだと距離があったので、今度は少し観察出来た。
間違いなく女だ。遠く視線まではわからなかったが、向こうもこっちを見ている気がする。

どうしようかと思っていたが、一瞬目を離したすきにいなくなってしまった。

ビルに入ってきたのかもしれないと思って軽くパニックになったが、しばらくしても女が現れることは無かった。

自分の席で座っていると、疲れからか寝てしまった。

朝になって会社の同僚に起こされた。

徹夜したのかとか、何かトラブルでも発生したのかとか聞かれたが、自分も記憶が混乱して曖昧にというか何も答えられなかった。

ひょっとして、仕事が終わって疲れてここで寝てただけで、全部夢?
ただ、コートは来たままだったから外には出たんじゃないかと思う。窓のそばに行くともちろん女はいなくて、雪もなくなっていた。
同僚に「一晩で雪は溶けちゃったんだな。」と言ったら「は?雪なんて降ってないだろ?」と言われた。

やっぱり夢だったのかもしれないが、今でもよくわからない。
ただ、夢にしては今でも女の吐息まで思い出せるくらい明確な記憶だ。

近くに心霊スポットもある場所ではあるが過去に何かあった場所なんだろうか?