当時は冬で、20時くらいに仕事が終わって会社を出て、イヤホンを付けて音楽を聴きながら、いつも通り帰り道のベンチの灰皿でタバコを吸ってたんだ。既に先約が数人いてベンチには座れずに俺は立ってた。
ただ吸ってるわけではなくて、スマホでニュースを見ながら吸ってたんだが、途中で突然ニュースの更新が出来なくなって、よく見たらスマホが圏外になってた。
こんな東京のど真ん中で圏外なんてあるかよと思ったが、まあ、いいやと思い顔上げたら違和感に気づいたんだ。

誰もいない。

急いでイヤホンを外したら怖いくらい静かだった。
車も走ってない。
数年その現場に通ってたが、21時前でこんなに人が居なくなるって始めてだったが、その時は珍しいこともあるもんだ。くらいだった。

タバコを吸い終わって駅に行ったが道中も駅も誰もいない。
自動改札は開いたままになっていて、近くに駅員もいないし、でもまあ通勤定期だし降りる駅で事情を言えばいいかと思って駅に入ってホームで電車を待ってたんだがこの時間で30分待っても全然来ない。次の電車を示す掲示板を見たら、それは映ってなかった。

さすがにおかしいと思ったんだが、その時点ではまだオカルト的なものではなく、政府から緊急避難命令みたいなものがでて、俺が音楽聴いてたから聞きはぐったのかもしれないとか思ってた。
そんなこともあるわけ無いんだが当時は本気でそう思った。
駅前に交番があるからそこなら警察官か誰かいるだろうと思って向かったんだが誰もいなかった。