火水伝文
 「何かに付け三真釣り持ち行く申すは、口と心と行いを、少しも違えず行に結ぶ
ことでござるから、【違えず行に結ぶこと】だけを念頭に、身欲損得を捨てて行
じて下されよ。考え深くあるよりは、真釣り深くありて下されよ。真釣りに響く
考えるは【カミカエル】でござるから、善いのであるが、魔釣りに響く考えるは
《我が得る》だけであるからぞ。《我が得る》だけでは、益々真釣りを外すだけ
ではござらぬか。神のご用に使う程の者は、我があり過ぎても無さ過ぎても困る
のであるから、真中と我、どちらが汝の主であるか、今今にハキリ、タテワケ致
しぉいて下されよ。汝等の真中と我、同じじゃ思い見なし居りては間違うぞ。
 〔我〕申すは、汝等生来の色にござるのじゃ。色の響きざ申しても善いぞ。元
々のものなれば『我善し』思うも『我悪し』思うも、偏りたるハタラキの顕れに
ござるを知りて下されよ。〔我〕に元々善悪は無いのであるぞ。双方〔我〕を律
し切れぬが困でござるよ。双方ご自身の真中を知らぬが由の不手際にござるよ。」