そしてAは、笑いが収まると
「先輩、マネキンの所に財布取りに行ったかなぁ」
と言い、それを聞いた彼氏も興味津々らしく、早速マネキンの所に確認に行くと言い出しました。わたしとS子も誘われましたが、M先輩に出くわすかもしれないと思い、部屋で待っていると言った為、Aと彼氏は2人で確認に行きました。
それから少しして、2人は戻って来たのですが、不思議そうな表情をしていたので、それを見たわたしが
「どうだった?」
と聞くと、2人はまだ財布がマネキンの所に有った事を告げました。それを聞いたわたしは
「先輩、絶対2人を疑ってるんだよ」
と言って、先輩に謝って財布を返した方がいいと言ったのですが、もう少し様子を見ると言って聞きません。そんな時、後輩のTが窓の外のマネキンの腕を見ると
「マネキンの腕、あそこに置いておいて大丈夫ですか?」
と言ったので、彼氏が仕方なく取りに行くと言って部屋を出て行きました。わたしは窓からマネキンの腕を見ましたが、もう炎は消えており周りの雑草が燃えたらしく、黒くなっているのが見えました。
少しすると、彼氏がマネキンの腕の所に行ったのですが様子が変です。彼氏はキョロキョロと周りを見渡し始めました。そして、上から見ているわたしを見上げると
「なぁ、マネキン腕どこ?」
と言うのです。それを聞いてわたしは
「そこに無いの?」
と言うと、そこは焼け跡だけで何も無いと言います。わたしは、元々目が悪かったのでマネキンの腕を上から見つける事が出来ません。そんな私たちのやり取りを聞いていたAとTが窓から確認しましたが、マネキンの腕らしきものは周囲に見当たらないらしく、2人は下に降りて彼氏と一緒に探し始めました。
30分位、3人で周囲を探しましたが、結局みつからなかったのです。
3人は部屋に戻って来ると、マネキンの腕が消えた事を気味悪いと言っていましたが、やがて財布をM先輩に返して、もうこの事は忘れようと言う事になり、Aが財布を取って戻ってきました。