以前勤めてた会社の同僚だったTさんから聞いた話。
Tさんの娘さんが4歳のころ、おかしなことがあったそうだ。
夜、寝かしつけようとしてたら娘さんが突然大声で叫びだし、手が付けられないほど大暴れしはじめた。
困ったTさんは奥さんと一緒に娘さんをなだめるが、癇癪は一向に収まらない。
そうこうしているうちに、精根尽き果てた娘さんは糸が切れるように倒れ、そのまま泥のように眠ったそうだ。
翌朝の娘さんはいつもと変わらぬ様子で、昨夜の大暴れは全く覚えていないらしい。
そんなことが数日続き、困り果てたTさん夫妻はかかりつけ医をはじめ、様々な専門家に相談したが娘さんには何の異常も見つからず、幼児期特有の現象として片付けられてしまった。

「そんなに凄かったんですか?」
「そりゃあ凄かったよ。殺されるんじゃないかってくらい必死に暴れるし、俺と嫁の言葉は一切聞かないんだから」
「奥さんも大変でしたね」
「大変大変。いったん暴れ出したらもう最後。お気に入りのおもちゃ渡しても、大好きなアンパンマン見せても、アイスやってもガン無視でさ、なんか普通のむずがりとは全く次元が違ってたな」
「そんなに違うものなんですか?」
「ああ、全然違う。なんて言うの、こっちの言ってることが一切伝わらないまま、わけわからない言葉まくし立てるの。なんか意思疎通が全く出来ない感じ」
「そりゃ凄いですね。それで、いつぐらいまでそんな感じだったんですか? 今はさすがに落ち着いてますよね」
「そりゃ今高校生だからね。本人はそんなこと覚えてないし、おかしかったのは半年くらいだったから」