その序文にはまたしても詞のようなものが挿入されていました。
「孕リ水子縁切リ咒」…おそらく「みごもりみずこえんぎりまじない」と読むのでしょう。まえがきにしては相当な長さでした。

その中でも、特に強烈に私の印象に残った、要所であると思われる部分を、記憶している限りで書き写してみます。

「疫癘胎中イジヤシボコニ 寄セヤ蒐メヤ 逆サ鏡ノ逆サ事」
「四方堅牢ニシテ此レ極メテ穢多 左ギツチヨノオンナシヲ慈シミ育テヨ 三ツヨリ鏡見セル事勿レ」
「腹削ゲヤ 腹削ゲ 山中他界往クコト能ワズ 魂呼ビ要ラズ 縁切リ縁断チ」

誤字などあるかもしれません。
覚えている中の一部なので、おそらくは読み上げたりしても問題はないと思いますが、あまり音読したい内容ではありません。

実際、これを読んだ私は、頭の中で何度か反芻させてその意味を噛み砕こうとしたのですが、その最中、いよいよ背筋が凍る思いがして、次の瞬間には「バンッ」と思い切り書物を閉じてしまいました。
直感的に「事細かに理解してはいけないものだ」と察したのです。