「誰があやしげなる様泣き響もう かかる話が在りますが 臓腑水腫りただならず 胞衣纏ふ民枯草もほんびたくす」

今回は漢字も、イントネーションも、言葉の区切りも明確でした。
そしてこれを読んだとき、本能的に「あ、ヤバい」と感じました。
頭の中に警報装置があるとしたら、それが唸りを上げ始めたのが分かりました。
夏の暑さのせいではない汗が噴き出てきたりもしました。

それでも何とか呼吸を落ち着かせると、そんな警報装置に聞こえないフリをするように、昔は読み解けなかった箇所にも目をやってみようと、更にページをめくっていきました。

そして私は、やはりすぐに、自分の動物的な本能を信じなかったことを後悔することになります。

古書の最終節の題は「逆サ神社創建提要」
黄ばんだ古紙に、赤茶けたようなな字で大きくそう書かれていました。

どうやらこの神社の正式名称は「逆さ神社」(さかさじんじゃ?)というようです。
立派な鳥居にも、境内にあるペットの散歩禁止の看板にも、この神社の名前は書かれていませんでしたし、私自身これまで、神社の名前など全く気にしていませんでした。

地元の人たちはその神社のことを「トコヒトさま」と呼んでいたので、それに合わせて私もそう呼んでおり、それが正式名称と思い込んでいました。

さて、そんな逆さ神社の創建提要ということは、建立に至るまでの経緯が書かれているのでしょう。
そう確信し、私は震える手で恐る恐る内容を確認しました。