神様の時代から六百年余りの年月がたち、平安時代の初めのころから穏やかだった富士山が、再び恐ろしい山になりました。
何回も何回も火を噴く山に、人々はひたすら山の神を拝み、噴火のあさまることを祈りました。帝(みかど)の耳にも届くようになりました。帝は 「富士山に位を授け、山の神として格を上げて拝んでみよう。」 とおおせられて、噴火の際に富士山の格や位を上げて、使者を遣わせて拝みました。
しかし、噴火は止まることはありませんでした。 恐ろしい山に、人々は相談しました。 「むかし、木花咲耶姫という神様が、御子も火の中で生んだとか。富士山に登ったら噴火もおさまったとかいうことだよ。」 一番の長老がいいました。
「噴火がおさまれば、最も美しい里になり、住みよくなるだけに、なんとか神様をお迎えしたいな。」 「ともかくみんなで力を合わせ、木花咲耶姫の魂を神様としてまつって拝んでみよう。」 若者たちも口を揃えていいました。里の人はみんな集まって、木花咲耶姫の魂を頂上におまつりしました。
すると不思議な事に噴火もおさまり、桜が咲き、雪解け水が小川に流れ、のどかな里になりました。