日本人の賃金が停滞し続ける「日本特有」の理由
国の賃金を決定的に左右するのは何なのか
https://toyokeizai.net/articles/-/475188?page=2
ここ数十年、実質賃金が上がっていない富裕国は日本だけではない。しかし、豊かな国の中で賃金の上昇率だけではなく、賃金自体が下がっているのは日本だけである。

成熟国では、賃金は、100年以上GDPとほぼ同じ割合での成長をしていたが、その傾向も最近はなくなってきている。1995年から2017年の間に、生産性、 すなわち労働時間あたりのGDPは豊かな11カ国で30%成長した。しかし、実質的な時間当たりの報酬(賃金+福利厚生)は、その半分の16%しか伸びていない。
 
日本の状況は「衝撃的」
日本の生産性の伸びは30%と、他国と同じだったが、労働者の賃金は1%減少している。
日本の労働者の賃金が最近まで他国の労働者のそれよりも国民所得に占める割合が高かったことを考えると、この状況は特に衝撃的だと言える。


(中略)


これほどまでに大きな影響となった理由は、単純な算数で説明できる。ある経済圏に3人の労働者がいるとする。2人は時給2400円の正規労働者で、1人は1200円の非正規労働者だ。
賃金総額は6000円、平均賃金は2000円となる。来年は、正規1人、非正規2人で、それぞれの賃金が変わらないとする。賃金総額は4800円、平均は1600円だけだ。このような変化が、過去数十年の間に日本で起きたのだ。

さらに大きいのは、非正規労働者の増加が、正規労働者の交渉力を弱めていることだ。2007年から2018年にかけて、正規労働者の実質賃金が1%低下したのもそのためである。