袋小路のドン付きに赤黒い半袖ワンピースに赤黒いハットを深く被った、髪の毛がとても長い、やや胴長の女性がいたんです。片手には何か棒状の物を持っていました(右手か左手かは忘れました)。ちなみに遠目で見てかなり背の高い女性でした。
この時瞬時にヤバいと思った理由は赤黒い服にとかじゃないです。冬なのに半袖ワンピースというのが異様でした。
その女性が視界に入った瞬間に僕は「あ!」と声を出してしまったので、女性はこちらを向きました。僕と女性の距離は、もう淡い記憶で申し訳ないですが25mプール分くらい離れていたと思います。
彼女の風貌はまるでホラー映画の女幽霊のテンプレートでした。長い髪の毛は顔を隠していて、距離が離れていた事もありますが目元の表情は見て取れませんでした。
ただ口元はずっと動いていました。ずっと動いていました。何かを話しているというより、アナウンサーの方が発声練習や滑舌を良くするために口をしっかり動かす体操みたいな感じで動かしていました。
にわかに気が動転してしまっていた僕は思わず
「こんにちは…」
と挨拶してしまいました。