俺はおっさんが気持ち悪くて仕方なかった。ゾッとした。風呂に入ったみたいにびしょびしょに汗で湿った男の濡れた髪がピトッと腕に引っ付いて、俺は絶叫した。発狂しそうなほど気色悪くて毛根からドバッと汗が吹きでできたにも関わらず、振り上げたハサミをおっさんにぶっ刺すことも出来なくて、俺は号泣した。
殺したいのに殺してはいけない。我慢して、日常に戻らなければいけない。おっさんを右手に引っ連れてまたあの悪臭に脳を犯されなければいけない。あと何年この生活が続くのか。この男はいつになったら俺から離れるのか。大学に行って、恋人を作って、就職して、結婚して、子供が出来て…その過程を俺は一生この男を腕にぶら下げて過ごすことになるのだろうか。出会う人は皆、両親と同じように、1度拾ったのならきちんと面倒を見なさいと、そう俺に言うのだろうか。