だが、俺が最もおっさんに嫌悪を感じるのは彼の体臭だった。
このおっさんは特に意味のある言葉は喋れなくて、赤ちゃんみたいにヨダレを垂らしてオッオッとかギィィギィィとか言ってるだけなんだが、意思は通じるみたいで俺たちが談笑していると会話に入ってこようとして顔を近づけてくる。
その時に鼻の奥を刺激するこのおっさんの肌の香りが、俺には耐えられないほどの悪臭に感じられた。
垢と皮脂脂とベタベタした髪と、おしっこと汗の匂い。
近くに寄られるだけで涙が出てくるほど吐き気がして逃げ出したくなるくらい嫌な匂いだった。
だのにおっさんは俺の顔のすぐ傍でキス出来そうなくらい近づいてヘラヘラ笑ってる。
俺が面白いこと言った後なんかに周りの奴らが笑ってるの見て真似するみたいに笑うんだが、それがなんというか、1拍ズレててやけにデカい声で笑うもんだから俺も冷めるし周りも引いちゃう。
わかるかなぁ。友だちにそういうやついない?いつもボソボソ喋って変な所で謎に我の強い陰キャなんだけど、たまに「いやそこじゃないだろ」ってタイミングでどデカい声で大爆笑して空気壊すやつ。