E祖父が入院
私が来年幼稚園に入園するという頃。特に目立った怪奇現象は起きなかった。
部屋の電気が急に消えたり点いたりはしたらしいが。
しかし、仕事熱心だった祖父が腎臓を悪くし緊急手術する事になった。

手術が無事に終わり、兄と私は友人に預け、祖母と母だけでお見舞いに行った。
病室に入り既に起きていた祖父に安堵し言葉を交わしていると、看護師さんが部屋に入ってきた。
祖母は深々と頭を下げ、この度はありがとうございました。と声を掛けた。
看護師さんも無事に終わって良かったです。と頭を下げ、続けて
先程奥様もお見舞いに来られてましたよ。とニコニコしながら言った。

凍り付く祖母と母。その様子には気付かず看護師さんは簡単に祖母の状態を確認して、その場を後にした。
無言の祖父。顔を青ざめている祖母。
母はハッと思い出す。まだ中学生だった頃、祖父に紹介された女の人と食事に行き、可愛がられていた記憶を。
祖父は長年1人の愛人を作っており、祖母はその存在を知っていて、それも一つの要因で精神的に不安定になっていった。

祖父は眠くなってきたと言って目を瞑った。
母は持ってきていた着替えなどを置いて、顔を青くしたままの祖母の手を引きそのまま家へと帰った。

大手企業に勤めていて中々の役職に就いていた祖父だったが、この病気が原因で会社からは体を休めなさいと役職を降りる事になり、ゆっくりと遠回しに退職へと追いやられる事になった。