海を越えたニュージーランドでも発生している。現地ニュースメディアのスタッフ誌は、昨年7月に突然チックを発症した16歳少女のケースを報じている。少女は初日に頭部のけいれんを感じながら目覚め、翌日になると汚い言葉を叫び散らすようになったという。少女は周囲の理解を得られず、失礼な言動をする若者だとの思い違いに心を痛めている。ニュージーランドでは昨年以降、こうした患者の数が例年の倍以上の水準にまで増加している。

カナダでも問題視されつつある。WIRED誌イギリス版は、カナダ・アルバータ州の精神科クリニックにおいて、今年5月までの1年間に通常の1.5倍のペースでチックの受診が増加していると伝えている。突然手を叩いたり脈絡なく「ノックノック」などと口走ったりする子供が増え、症例数は昨年のクリスマスシーズンまでに「天文学的な規模」になったという。

動画経由で世界に拡散か
国境を超えて増加しているこれらの症例について、徐々に原因が解明されるようになってきた。症状を媒介していると疑われるのが、SNSや動画サイトなどに見られる特定の種類の動画だ。症例に詳しいドイツ・ハノーファー医大の医師ら研究チームが本件の分析を行い、オックスフォード大学出版局が刊行する学術誌『ブレイン』に結果が掲載されている。

論文によるとハノーファー医大では昨年ごろから、症状を示す若者が病院部門に押し寄せるようになっていたという。医師たちは当初大いに困惑したが、患者たちの多くが特定のYouTubeチャンネルを視聴していることを割り出した。

当該のチャンネルはドイツの人気YouTuberであるジャン・ツィンマーマン氏が運営しているもので、ドイツで第2位の人気を誇る一大チャンネルだ。登録者数222万人を誇り、総再生回数は3億回を上回る。