5歳の男の子の成仏

 「5歳の男の子は、その後どうなったんですか?」と私は尋ねた。

 「男の子の話すことは、あちこちに飛んでとりとめがなかったのですが、そのうち
『今日はカレーの日だよ』って言ったんです。

 『野菜は嫌いだけど、カレーライスの中に入ってる野菜ならいっぱい食べれるの。
今日はカレーの日ってお母さん言ってた』と嬉しそうに言うんです。

 住職さんがそれを聞いて、『じゃ、カレーを食べるところに行こうか』と声をかけ
ると立ち上がりました」

 「カレーは食べたのですか?」と尋ねる。

 「今日のご飯はカレーだよと言われて、それを楽しみにしていたという話でしたが、
住職さんの奥さんが作ってないので食べなかったのではないでしょうか。

 そのあと、住職さんが男の子をどう納得させたのかわかりません。

 住職さんの奥さんは手を伸ばしてくれて、その手を5歳の子がしっかりと握っている
のを見たとき、よかったと思ったのを覚えています。わたしはその様子を見ながら……
私の言葉で言えば『死なせるべき場所』へと歩いて行きました。

 5歳だから死を受け容れたかどうかはわかりませんが、行くべき場所に行くよとなっ
たとき、読経が始まりました。