https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75008
30人の死者に憑依された女性。5歳の男の子の魂に感じた罪の意識

宮城県の古刹・通大寺では、人間に「憑依」した死者を成仏させる「除霊」の儀式が、
今もひっそりと行われている―――――。

2019年10月から2021年1月まで15回にわたり連載した記事に、大幅加筆、再構成を
した『死者の告白――30人に憑依された女性の記録』(講談社)が刊行されました。
これを記念し、記事のアーカイブを1ヵ月限定で再公開いたします。

今回は、第3回『津波が生んだ霊体験【前編】』です。第1回で紹介した、20~30人という
大量の霊に取り憑かれた女性本人に、著者の奥野修司氏が直接話を聞きました。
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緊急事態宣言が解除されて1ヵ月ほど経過した7月初旬、私は仙台駅から広瀬通り沿いに
あるビルに向かっていた。そこである女性が待っているはずである。

 ただ、私が知っているのは彼女の名前と、それに30代前半らしいということだけで、
会ったこともないから顔も知らない。

 もし行き違いになったらどうしよう、などと考えていると、はるか先のビルの前で、
私のほうに向かって会釈する女性が見えた。

 おしゃれで活動的で、見るからに明るそうな女性だった。名前は高村英さん。
雰囲気は、近くのオフィス街に勤めていると言われても違和感がないほど普通の女性で
ある。でも、彼女の体験は普通ではなかった。

 彼女は、東日本大震災の翌2012年6月から2013年の3月までの約10ヵ月間、宮城県
栗原市にある古刹、通大寺に通って金田諦應住職に「除霊」をしてもらった女性である。

 金田住職は、彼女の中に20人ほど憑依したと語っていたが、高村さんによれば、
実際は30人近かったそうだ。