渡された携帯に耳を当ててみると
「サーッ」と木々が風に煽られる音が流れていた。
暫くそのまま聞いてると女性のかすれた声で
「カエッテ…」「カエッテ…」
流れてきた。

思わず携帯から手を放しAの顔を見た。
Aの顔色の理由がこの時に分かった。
すぐに留守電を切り、着信履歴見ると
「通知不可能」
の文字が出ていた。
こんなのは初めて見た。

これはまずいことになったと直感的に思い仏道に所縁のある母に相談したが
「気のせい」だと思えと言われた。
いやいや思えるわけがない。
実際に見て聞いたのだから。
恐らく母は信じてはいたものの、そこまで重く捉えていなかったのだと思う。

もう母は当てにならないので、トンネルの場所を教えてくれた先輩に相談することになった。
先輩が言うにはそもそもトンネルの場所が間違えているとのことらしい。
そんなトンネルは知らないとのこと。
これは後に知ったことだが、自分たちが行ったのはおばけトンネルと言われるところらしい。
先輩曰くとにかく誤りに行った方が良いとのことで
早速その日に昨日のメンバーで向かうこととなった。