倒れている人のところに数人が駆け寄ると、うつぶせのものを仰向けにし、
なおかつ一人が上半身を抱き起こし、揺さぶり始めました。
Sさんは、「あちゃー、あんだけ頭打ってるのに動かすなよ」と思いましたが、
そういうときはかかわらないことが最善の選択なので、
だまって見ていました。そしたら、白目を剥いている被害者に平手打ちをするわ、
無理やり口をこじ開けて水か酒!を飲ませようとするわで、
「こりゃ、黙ってれば助かるかもしれないものを、こいつらが殺してるよな」
と思ったそうです。ま、現地人は善意でやってたんでしょうけども。
そのうちに派手なマークの入った救急車が来ました。
が、救急隊員が降りてくる前に加害者の男が駆け寄って、
運転席に向かって何やら言い、救急車は引き返しちゃったんです。

これは、その救急車はおそらく目撃してた通行人が呼んだもので、
私設のというか、大病院に付属してて、契約者しか助けにこないやつ。
つまり有料だし、車体に入ったマークの高級病院に搬送されることになります。
加害者の男はそれを嫌って返したんでしょう。
それから10分ほど見ていても、警察も公営の救急車も到着せず、
その間、被害者はまったく動かず、加害者は見下ろしながら煙草を吸い出しました。
「これはアカンだろうな」さすがに胸が悪くなってきて、
Sさんはそこの屋台を離れて、もう一つ奥の通りに入って飲み直しました。
10時頃まで飲んで、そのとき根城にしてたビジネスホテルに戻りました。
安ホテルですが、これは有名な大ホテルであっても、従業員が
悪いやつと結託している場合もあるので、危険の度合いはそう変わりません。