幸い亡くなった人はいなかったけど、教団の信用はガタ落ちですよ。
この事件で東京にいる信者も、目が覚めた人が多かったんでしょう。
どんどん教団に入ってくるお金が目減りしはじめました。
なんでも信者の吐瀉物からは、これまでに検出されたことのない菌が出たそうです。
それでも教祖様は、ミサの3回めをやるって強がってましたね。
ええ、それが最後で次はなかったんです。
やはり教祖様が説教を始めたときですよ。一言二言しゃべったら、
教祖様はふらっと演壇から降りてしまわれ、いきなり 「わしは罰あたりじゃ!」
って大きな声で叫んだんです。そしたら教祖様の額からたらたら赤い血が流れてきて、
見ると額の両端から何かが生えてきたんです。・・・角でした。
鬼みたいな黄色っぽい角がずんずんと生えてきて、

遠くにいる信者からもわかったと思いますよ。角は1mくらいまで伸びましたんで。
でね、角は伸びきるとまた引っ込んでいって、そのころには教祖様の顔面は血だらけ、
角が完全に埋没すると同時に、教祖様はドターンと後ろに倒れたんです。
それでまた救急車を呼ぶはめになりました。これで教団はもうおしまいですよ。
教祖様は夜中に病院を抜け出して、警察にも連絡して行方を探したんですが、
朝になって、ほらあの、工事のときに取り壊したお堂のあった場所、
その前に土下座するような格好で座り込んだまま死んでたんです。
ええ、跡継ぎなんていなかったし、いてもこれだけ評判が落ちれば、
どうにもならかなったでしょうね。教団はつぶれてしまいました。
僕は運転手の仕事もなくなり、実家に戻ったんです。今は職探ししてます。
いや、もう宗教はこりごりですよ。ええ、ニセモノの宗教はね。