それも垣根をへだててのことなんだし、今まで一方的にやられてたのはうちのほう
なんですから。それで、隣家では葬式は行いませんでした。
話に聞くところでは、火葬のときに坊さんを呼んで、
そこで簡単にお経をあげてもらって済ませたみたいでしたね。
だから、気が進みませんでしたけど、香典を渡してお線香でも
あげさせてもらおうと、妻といっしょに隣家を訪ねたんです。
そしたら・・・山田さんが出てきましたが、わたしらの顔を見るなり
鬼のような形相になり、「妻はお前らのために死んだ。
 お前らが引っ越してこなければよかったんだ。この敵はかならずとってやる!!」
こう怒鳴られまして。でもねえ、敵って言われてもねえ。
ため息をつきながら妻と家に戻りましたよ。

これで山田さんの攻撃がさらに激しくなると思ったんです。ところが・・・
翌日から山田さんは朝早く庭に出ると、何か機械のようなものを組み立て始めました。
いや、わたしにはよくわからないんですが、変電所とか電柱の上にある電極?
みたいなのがたくさんくっついたやつです。そうですね、
大きさは公園のジャングルジムくらい、全体の形もそれに似ていました。
で、午後になると軽トラで出かけていって、
その機械の材料をたくさん積んで戻ってくるんです。ええ、こちらが庭に出ても、
まったく目もくれませんでした。まさに鬼気迫るって感じで、かえって怖かったです。
でね、2週間くらいたって、夜、家に山田さんが来たんです。
山田さんは玄関に入るなり、「機械が完成した。これでお前の一家は終わりだ!!」
これだけ言って出ていったんですよ。