「おすすめ」のワナ

 <隠された真実がわかりました><勇気ある発信に感謝します>

 多くの陰謀論の動画のコメント欄は、その内容に強く賛同する視聴者の言葉で埋め尽くされている。支持を集める要因とみられるのが、「おすすめ動画」の仕組みだ。

 ユーチューブには視聴者の再生履歴などに応じ、その人が関心を持つと推測される動画が自動的に表示される機能がある。世界のユーチューブの全視聴時間の7割以上は、この機能によるものだとされる。

 一見、便利な仕組みだが、動画をよく見ていると、似た内容が画面に並び、いつの間にか自分好みの情報ばかりに囲まれる――。泡に包まれた状態に例えられる「フィルターバブル」に陥りやすいというわけだ。

 桜美林大の平和博教授(メディア論)は「動画は文章と比べ、感情に影響しやすく、共感が強まりやすいと言われる。同じような動画を繰り返し見ることで過激化したり、陰謀論にのめり込んだりする危険性もある。こうした落とし穴を理解してから利用するべきだ」と指摘する。

 東京の別の塾経営者も、大統領選を巡る根拠のない情報を配信していたが、1月末にやめた。

 元々は、日本史や世界史の学習動画のチャンネル。即席の「評論家」に転じた理由を「ネットで話題になっており、金を稼げると思った」と明かす。

 知らない人からツイッターで送られてきた怪情報を話しただけで、真偽の確認はしなかった。「話半分で聞いてもらうつもりだった。本気で信じた人のコメントが増え、違和感を覚えた」

 配信内容は学習動画に戻した。最高9万回まで伸びた再生回数は今、数百回にとどまっている。