私の父は、死の数週間前、ほねがおれておきあがれないはずなのに、
おきあがって、あるいて、自力でお風呂にはいり、湯船からでてきた。
ビールをのみ、ベッドに横になった。幸せそうだった。
それっきり、おきあがることはなかった。
私の母は、ある病気で、食欲などない、そういう状態が長く続いたが、
あるとき、朝から「お腹が減った」と言い出し、少しボリュームの
ある食事を、ぺろりと平らげ、幸せそうに、ああおいしい、といった。
それからしばらくして、だいどうみゃくかいりで、けっかんがきれて、
うごけなくなった。
最後とは、そういう意味ですよ。