「殺したのはオラじゃ〜」 「憎くての〜どうしようもなかったんじゃ〜」
「みんなに瘡かきをうつしたのはオラじゃ〜」
「吾作の水がめに糞尿を入れたのはオラじゃ〜」
「次郎左の田んぼの堰を切りはなしたのはオラじゃ〜」
「ゆるしてけろォ〜 けろォ〜 けろォ〜」
全員のがなり声がまぜこぜになり、皆が皆大きな口を開けて天を向き、
村の一本道をよだれを流し息せききって走ります。

もう走る人は五〇人を越え、
村の一本道は行き止まりの旦那寺珍宝寺へと近づいています。
珍宝寺の前では、和尚のどんたく上人が一張羅の袈裟を着て待っていました。
そうして土煙をたてて走ってくる五〇数人の前に立つと、錫杖を振り上げ、
「喝!!」という大音声とともに地面に突き立てました。