「でもよ、触ることもできるし、このままにしてれば内臓までいってしまう。
わかるか、呪いなんだよ。俺は闇金やってるんだが、客に呪われた。
だからこの場所に解きにきたんだよ」
「??? 意味わかんないですよ。その虫みたいなのは見えます。
医者行ったほうがいいんじゃ」
「ダメだ、医者は糞の役にもたたん。ああ、もうくる時間だ」
「くるって何が?」 「神魚に決まってるだろ、ここは山中湖だぞ。
回遊する時間が決まってるんだ」ますますわけがわからんかった。

「いいから、俺がこの板の突端に向かって尻を出すから、
もってかれないように両手を引っ張ってくれればいいんだよ。
それだけで財布の中身全部やる」
こんなことを言い合っているうち、湖の中央のほうに白い波が立つのが見えた。
「あああ、来た」おっさんが後ろを向いて尻を湖に突き出し、
そのヒルみたいな生き物がにょーんと水の上に垂れ下がった形になった。
「俺の両手を強く引いてくれ。アンちゃんも踏ん張ってな。
じゃなきゃ俺まで食われる」