「屁の国?」 「ああ、屁の国は飯も食わずに済むし、暑い寒いもねえが、
ただし臭せえんだよ、とてつもなく臭せえ。新鮮な空気がねえんだ。
俺あ、やっと出てこられてうれしい」おっさんは涙を流してたな。
で、あたりの様子がわかるようになると、壁の尻がなくなって、
それからカンチョーした仲間の姿も消えてたんだ。

「今、何年だ?」おっさんが言ったんで「2016年だよ、
それより木村はどした?」
おっさんは、「ああ、俺は屁の国に12年いたのか。木村? 
その人が俺にカンチョーしてくれたんか?
ああ、ありがてえ、俺の身代わりになってくれたんだ」 「???」

「屁の国じゃ、年に3回だけ外界に尻を出させてもらえんだよ。
そんときに運良くカンチョーするやつがいたら交代できるんだ。
ありがてえ、ありがてえ。しかし寒みい、冬なんだな」おっさんは続けて、
「まあいいか、もともとホームレスだし、
どっかで服 調達するか、留置所でも入るわ。
もし木村さんが出てきたらよろしく言っといてくれ、感謝してるってなあ」

そう言い残して、チンコをぶらぶらさせたまま歩き去っていったんだよ。
あれから1週間、感謝を伝えるも何も、木村はマジで行方不明だ。
まさか屁の国なんてものがあるとも思えねえが、どういうことなんだろうな。
とにかく何か知ってたら教えてくれ。俺は木村に4千円貸してるんだよ。