それから上部が火を出しながら真っ二つに避けたんだ
落雷したんだ でね、裂けた幹の真ん中から黒い煙が立ち上って、
それは渦巻きながら人のような形をとったんだよ あれは武神だったな
仁王様とかああいうやつ すごく怒ってることがわかったんだ
黒い煙はしばらく木の裂け目を漂って、それから薄くなっていった
「おーい、そっから離れろ」って声が後ろから聞こえた
振り向くと神主さんが走って来るところだった
「なにやってる、危ないじゃないか」
幸いにというか火はもう燃えてなかった 雷もあの一発だけで、
あとは遠くでゴロゴロいうだけになり、空が明るくなってきた
俺らは社務所に連れてかれ、タオルなんかを貸してもらった

「何やってた」と聞かれたんで、6年生が代表して説明した
呼ばれたような気がして、それぞればらばらに集まってきたこと
御神木を見ていたら大雨がきて雷が落ちたこと
黒い煙が渦巻きながら大きな神様の形になって消えたこと
ものすごく怒ったき気持ちが伝わってきたこと、なんかをね
それを聞いた神主さんは、うーんと考え込むような表情になったよ
でね、この御神木はもうすぐ切り倒されることになってたんだ
そのままにしておくと倒れる可能性もあって危険だってことで
業者が伐って買い取ることに決まってたんだよ だけど落雷で
価値が大きく落ちたし、俺らの話もあって、伐ったは伐ったけど、
売らずに、根っ子と根元の太い部分を使って、仏師に神像を彫らせたんだ