6年生は怪しむ様子もなく「そうか、俺はカブト虫にそう言われた」って
見れば捕虫網と虫籠を持ってた。他のやつらも、
家の畑を手伝ってたらキュウリに言われたとか、
ゲームしてたら画面にそう出たとか、おかしなことを言い始めた
今考えれば異常だけど、そんときは、変だという気はしなかったんだよ
とにかく全員で鳥居をくぐった。6年生が先頭に立って社殿にお参りし、
持ってた小銭を、賽銭として投げるやつもいたよ
で、それから裏の杜にまわった 雨が少し強くなってきた。そんときに、
このメンバーで去年の例祭のときにお神輿を担いだんだって気がついた
もちろん旅行に行ったとかで来てないやつもいた 中学生になった
去年の卒業生とかもね 裏の杜には柵で囲まれた御神木があるんだよ

楠の大木で、樹齢400年以上って言われてた
どうもそっちから呼ばれてる気がしたんだ
だけどのこ御神木はそんときは枯れかけてたんだよ。
新しい葉が出なくなって、幹も乾いた感じになってたな
で、俺らが柵の回りに集まったとき、急に雨脚が激しくなった
いつの間にか上空は黒雲に覆われてて、大粒の雨がびしびし打ちつけてきた
空が光った。そしてすぐ轟音、雷が近くに来てるってわかった
濡れるのはべつに平気だったけど、雷は怖かった どうしようかと
あたりを見たら、6年生が両手を広げて「下がれ」の合図をした
俺らが後ずさりして柵から離れたちょうどそのとき、
ドカーンという破裂音がして、目の前の御神木がぼうと光った