だから、悪いけど俺は、じいさんのボケが始まったと思ってたんだよ でな、
冬がそこまで近づいてきた頃だ 朝飯のときにじいさんの姿が見えなかったんで、
俺と弟で探しに出た そしたら、母屋からかなりはなれたとこでしいさんが
倒れてた。上半身血まみれで、喉から太い木の枝が突き出してたんだ
かなりもがいたらしく、そこらの雑草がむしれてたよ あとな、じいさんの右手、
それにトラバサミの罠が食らいついてったっけ 仰天して親に知らせ、
親父が見に来て救急車を呼んだ ・・・じいさんは死んでなかったんだよ
けども、刺さった枝が気管と食道を大きく傷つけてて、
肺に水がたまって1週間後くらいに亡くなった 幸いというか、
ずっと意識がなく、苦しむことはなかった 警察も来たよ けど、事件性はなし、
転んだとき、たまたま地面にあった枝が刺さったんだろうってことになった

まあなあ、うちを恨んでる人間なんていなかったし、それが妥当な解釈だが、
ただ・・・一連のことを考えると、王様を殺されたやつらが山を下りてきて
じいさんに復讐した 俺と弟はそんなことも考えてたんだよ
じいさんの葬式が終わり、遺骨はしばらく家の仏壇に置いておくことになった
納骨は春がよかろう、って住職が言ったからな。で、それから3日後くらいだ
夜中の2時頃かなあ 俺は音楽を聞いて起きてて、腹が減ったんで1階の
冷蔵庫から何か食いもんをあさろうと考えて、台所まで行ったのよ
で、ハムを厚く切って戻ろうとしたとき、廊下で何か音がしたんだよ
「ん?」そっと出ると、異様なものがいたんだ 一言でいうと小人
チワワくらいの大きさかなあ 見たことのねえ服を着て、髪の毛を
編んで垂らした小人が、両手で何か白いものを捧げ持つようにして歩いてた