隣の市といっても、俺の実家がすでに隣の市との境界線に近いところにあるので、歩いて通えないこともない。

だが昼間、Aの街で闊歩したくないので、とりあえずは中古車でいくことになった。

それで教えてもらった住所をカーナビに打ち込んで、例の産経新聞に到着したいんだが、…ボロい。 ボロい? ……いやボロいんではない。

よく見てみると建物は、しっかりしてるしボロくはない。なぜか店の入り口の前に、壊れた冷蔵庫やエアコンがある。さらに、そこから裏手に配列していくようにメダカや金魚を飼う水槽が山積みになってる。これらのせいで店がボロく見えるのだ。

このときは別に対して気にならなかった。そして中に入ってみた。

そしたら事務のおばさんが部屋に案内してくれて、色々と話を聞いた。なんでも配達員が年寄りしかいないとのこと。年寄りと仕事はしたことなかったので、その時の俺にとっては逆に新鮮だった。

年寄りと仕事してた方が、無難に安全じゃなかろうか? 同年代くらいのやつからのパワハラとかも無いだろうし、陰口とかイジメもないだろうよ。

それで事務のおばさんと、配達区域の話やら部数、給料、配達時間とかの話をした。

ここで一つ問題があったのが、「俺は産まれて一度もバイクに乗ったことがなかった」。そのことは前もって話をしてあったので、配達を仕切ってるリーダーみたいな人が俺のために来てくれた。配達区域を空回りしながらバイクを練習するということだ。

そのリーダーって人が、女ヤンキーだった。腕に刺青を入れてて、髪も金髪で、服装もまさにそれっぽい感じ。ケータイの着うたも何かアゲアゲ系の耳障りな歌が鳴ってる。

それで俺はこの女ヤンキーのリーダーの人と、配達区域を空回りしつつもバイクを練習することになった。