ゴリラは諸事情から病院を休業することになり、暇をもて余したので、「医師ではなく、友人として」主人公の不眠症を治療するため、原因を探すために、主人公の過去を探っていく事になる
ゴリラは主人公の出身地を訪れ、現地の図書館で過去の新聞を調べて見ると、主人公の両親の死亡記事が出てきた
記事によると、車で海に飛び込むという一家心中であり、一人息子である主人公だけは奇跡的に生還したらしい

ゴリラは、幼い頃の主人公の日記や、病院の診察記録を手に入れる
それによると、主人公の幼少期は悲惨なものだった
父親は外に愛人を囲っており、たまにしか家に帰って来ない
母はストレスから過食症を患っていて、まるでセイウチのようにブクブクと肥えていた
主人公は学校では「セイウチ」と呼ばれて陰湿ないじめを受けた
家では泣くことを我慢していた主人公だったが、学校では毎日のように泣いていた

そんな環境で育った主人公は、人間が嫌いだったが、動物は好きだった
動物図鑑を読んだり、動物園に行くのがささやかな生き甲斐だった
人間の目を見ることは出来なかったが、動物の目なら見ることが出来た
そして、「自分も動物になりたい」と願っていた

ある日、珍しく家族3人で車に乗って外出する事になった
車を運転しているのは母で、父は後部座席でグッタリとしていた
主人公は「どこに連れて行ってもらえるのだろう」と楽しみだった
その時、母は完全に発狂していて、一家心中のために車ごと海に飛び込んだ
両親は死亡したが、主人公だけは奇跡的に生還した

しかし、主人公は事故の際に脳を損傷したことに加え、精神的ショックから、視覚に異常が発生してしまう
彼が病院で目を覚ますと、そこは「動物たちが人間のように暮らす世界」に変わっていた
そして鏡を見てみると、自分の姿はセイウチに成っていた
幼い主人公は、これを「願いが叶った」と密かに喜んだ