2018年7月、米スミス大学に通う黒人学生のオウモウ・カヌーテさんが校内で人種差別を受けたと訴えた。しかしこれは虚言であり、複数の職員の生活が崩壊してしまった。

カヌーテさんはこの日、一時閉鎖中の寮の食堂で昼食を食べていた。

ここを通りがかった60代の寮管理人が閉鎖区域に人影があることに気付いたが、目が悪く学生だと分からなかったため、規定通りキャンパス警備員に知らせることに。非武装の男性警備員が駆けつけると、すぐに学生だと分かり短く丁寧に会話をした。

二人の職員は勘違いを詫びたが、カヌーテさんはその夜「有色人種の女性がスミス大学にいることに疑問を抱く人がいること自体とんでもない」とSNSに投稿。また「警備員は殺傷兵器を所持していたようで頭がどうにかなりそうになった」と書き込み、一気に拡散した。

翌日には同大学のキャサリン・マッカートニー学長が「人種差別と偏見が今なお続いていることを思い起こさせる」として謝罪。職員に事情も聞くこともせず、管理人には停職を言い渡した。

同年10月に法律事務所が調査を実施したが、関係職員による人種差別の証拠は見つからなかった。

カヌーテさんは食堂の前に訪れたカフェでも「イベントの予約が入っているため使用できない」と女性従業員に言われていたようだ。そこで彼女はネットでこのカフェ従業員の実名や写真をあげて人種差別者呼ばわり。免疫疾患を持つこの職員はストレスで発作を起こして入院、一時解雇された。新しい職を探すのに苦労している。

それでもマッカートニー学長は「黒人生徒が警備員を見て恐怖を感じたことをこの報告書は裏付ける」と女学生を擁護。今回の騒動で生活を壊された職員に対しては謝罪や補償をしていない。

https://www.nytimes.com/2021/02/24/us/smith-college-race.html