テキサスが停電に陥った理由
http://ieei.or.jp/2021/02/yamamoto-blog210222/
先週(2月14日の週)初めから、日本のメディアでも米国を襲った寒波が引き起こしたテキサス州の大規模停電が報じられている。
一時400万以上の契約者が影響を受けていたが、2月21日(日)午前の時点では、1252万契約数のうち停電しているのは3万1600に減少しており、大きな停電の危機は脱したようだ。停電の原因については、テキサス州が全米一の導入量を持つ風力発電設備が寒波で凍り付き発電量が落ちたためと
ウォールストリートジャーナルなどが報道し、日本でも同紙の記事を引用するニュース報道もあった。
だが、2月17日最大4600万kWの電源が脱落した時点では、そのうち2800万kWは天然ガスを主体とした火力発電設備と報道されており、
再エネ設備が天候に対し脆弱なのは間違いないとしても、風力発電の脱落は停電の原因の一部に過ぎないようだ
(注:電力の系統運用を行っているテキサス電気信頼性評議会₋ERCOTのホームページは、停電発生時から安全上の理由として閲覧ができない状態になっており、
この原稿はERCOT幹部が報道機関に述べたデータなどに基づいている)。
 停電の原因は寒波により電力需要が急増したにもかかわらず、燃料供給、発電設備が影響を受け電力供給力が大きく落ち込んだことだが、
送電網が他州とはあまり連携せず(図-1)、メキシコ、隣接州と細々と電力のやりとりをするだけのテキサス州の事情もある。
この連携状況のため、2011年の寒波来襲時にも輪番停電を経験している。また、2019年夏の電力需要急増時には卸電力価格が1kWh当たり9ドルの上限価格に張り付いたこともある。
11年の停電時、19年の卸価格高騰時ともに議論になったのは、容量市場を導入せず、卸市場に全てを委ねるテキサス州独自の電力市場だった。
今回の停電も根本原因は容量市場を導入せず余剰設備を持たない制度にあるのかもしれない。