それから、ここらではよほどの大家でなければ、
遺体を寺に安置して通夜を行うんだが、
(ただし交通事故などで損傷した場合は先に火葬してしまう)
この地方独特の風習として、北枕にした遺体の枕元に小さい黒い屏風を立てる
遺体は魂が抜け出した空の状態にあるので、
そこをねらって悪い気が入り込んでくることがごくたまにある
それを防ぐための黒屏風で、風などで倒れないよう、
しっかりした台座がついている

一度だけ、強い風で屏風が倒れたのに小一時間ばかり気づかない
ことがあって、そのときは白布の下で閉じられていたはずの
遺体の目が、かっと見開かれていたそうだ
それに気づいたのがもう僧籍に入って修行していた友人で、
長い時間特別なお経を唱えるとひとりでに目が閉じて、
悪い気が抜けていくのがわかったという