オラが村は大きな街まで自動車で1時間の、いわゆる田舎町というやつだ。
イオンは無いけど、スーパーやコンビニくらいはある程度の田舎だと思ってほしい。
タイトルの時点で、オラが村の話だな、と気付いてしまった人は同郷のナカーマな。

さて、本題の「死ねしね様」なんだけれど、町では無害な存在だと広く知られてる。
やることといったら、人間の左耳にボソッと、「死ね」と囁くだけ。
物騒な名前をしているくせにホントそれだけの存在なんだよね。

部屋に独りで居るとき、「死ね」なんて囁かれると怖いは怖いが、実害はない。
無視していれば、そのうち飽きてしまうのか、どこかに行ってしまう。

しつこい時もあれば、アッサリと消える時もあって、これは「死ねしね様」の気分次第なんだと思う。
時間も場所もランダムで、独りの時もあれば、友達と遊んでいる時に聞こえたりもする。

「いま、死ねしね様に死ねって言われた!」とか、
小学生が自慢げに話すくらいには、オラが村では当たり前の存在として扱われている。
書いてて、いまさらになって思うけど、町の外の人間から見たら異常な光景だよな。
でも、オラが村では日常の風景に溶け込むくらいにメジャーな存在だったんだよ。

そんなオラが村にも文明開化の波がやってきた。
チェーンソーが山を切り開き、ブルドーザーが大地を耕すニュータウンというやつ。
大きな街には工場なんかの働き口もあるから、職場まで道路一本の住宅街ができたんだ。
街からは一時間の立地だし、街のほうに親戚も住んでるし、
閉鎖的でもないオラが村だから新しく来た人達と大きな問題は起きなかったんだけど、ひとつだけ問題があった。

問題になったのは、「死ねしね様」だ。