高山病になるほど高度は高くなかったが、食事後に重くなった足はどんどん重さを増していった。

そんな中で危険な道に来てしまった。
スマホの電波もないため、そこがそのルートで最大の難所だと言われている。
そのまま留まり、誰かが通るのを待つか迷ったが、ゆっくり進むことにした。

途中、道が崩れているところがあり、両足をそろえて立つことが難しい箇所もいくつかあった。
そこを何とか乗り越え、少し開けていて人一人が座れるスペースがあるところまでたどり着き、休憩したときに事故が起きた。

少し座って休むつもりが、いつの間にか深く寝入ってしまった。
寝ぼけて体勢を直そうとしたとき、背もたれにしていたザックを崖下に落としてしまったのだ。
ペットボトルと保存食のクッキーを上着のポケットに入れていたため、それらはかろうじて難を逃れたものの、スマホや寒くなったら中に着るための衣類、そして肝心なテントまでを崖下に落としてしまった。

こうなったら動かないのが正しいと考え、少し先にある登山道が合流している地点まで進み、そこでビバークし人が来るのを待つことにした。
最悪、人が来なくても三泊目の山小屋には入山前に予約を取ってある。
俺から音沙汰がなければ何かしらの行動を取ってくれるであろうと期待して。