アスラ(asura)とは、インド神話・バラモン教・ヒンドゥー教における神族
または魔族の総称。

本来、『リグ・ヴェーダ』に見られるように、古代インドにおいてアスラは
悪役的な要素はあまりなく、デーヴァ神族の王インドラに敵対することもある
天空神・司法神ヴァルナとその眷属を指していたが、その暗黒的・呪術的な
側面が次第に強調されるようになり、時代が下った古代インドではアスラを
魔族として扱うようになった。「アスラはア(a=非)・スラ(sura=生)で
ある」という俗語源説も、この転回を支持するものだった。

インド神話がバラモン教からヒンドゥー教へと発展し、シヴァ・ヴィシュヌが
新しく主神となると、アスラはヴァルナの眷属であるという設定はなくなり、
神々の敵対者、主にダーナヴァ族・ダイティヤ族の総称としてアスラの呼称は
使われるようになった(カシュヤパ仙の憎しみから生まれたヴリトラや、シヴァ
の破壊衝動から生まれたジャランダーラなどもアスラとして扱われているため、
必ずしもこの限りではない)。彼らはデーヴァ(神々)のようにアムリタを飲んで
はいないため、不死・不滅の存在ではないが、自らに想像を絶する厳しい苦行を
課すことによって神々をも超越する力を獲得し、幾度となくデーヴァ(神々)から
世界の主権を奪うことに成功している。 ただし、中にはシュシュナのように
アムリタを隠し持っていたアスラもいた[1]。