【0次元点宇宙編-ポイントランド】

▼次元のない奈落の底 点の王国ポイントランド-1
▼▼球が幻の中でわたしを励ましたこと

考える時間はほんの一分もなかったが、わたしは直観的に、この経験を妻には隠しておくべきだろうと感じた。彼女が秘密を漏らす危険を懸念したわけではない。
フラットランドの女性には、わたしの冒険譚はとうてい理解不能だとわかっていたからだ。
わたしは、地下室の落とし戸から誤って落ちて気絶していたと、作り話をして妻を安心させるよう努めた。

で呪文のように、「北ではなく、上へ」と機械的に繰り返しているうちに、心地よい深い眠りに落ちていった。まどろみながら、夢を見た。

わたしは再び球の傍らにいて、球の光沢の色合いから、わたしへの怒りが完全に収まっているのが見て取れた。
わたしたちは、限りなく小さい輝く点の方へ移動しており、注意して見るようにわが師が促した。
近づいていくと、その点から、君たちがいるスペースランドの青バエのような、かすかなブンブンという音が聞こえる気がした。
その音はハエの音よりも反響が少なく、わたしたちが飛翔している真空の完全な静寂の中でさえ、対角線に二〇人入るか入らないかの距離になるまで、
耳に届いてこなかった。

「向こうを見なさい」とわが指導者が言った。「君はフラットランドで暮らし、ラインランドの幻を見て、私とともにスペースランドの高みに上った。
今、その経験を完璧にするために、存在のいちばん低いところへ、次元のない奈落の底へと連れて行こう。点の王国、ポイントランドだ」